【華語文法】介詞

  • 用語の説明
    • 定語:名詞などを修飾するもの。時に「的de」を伴い語句を修飾する。
    • 状語:動詞や形容詞を修飾するもの。時に「地de」を伴い語句を修飾する。
もくじ

介詞

名詞(句)や代詞を目的語として伴って介詞句を構成し、場所、方向、時間、対象、目的などの意味を表す

方向や目標を表す

  • 往wǎng:⋯⋯の方へ
    • 方位詞や場所を表す語を直後に置いて介詞句を形成し、動作が向かう方向を表す。例:往前一直走,過了第一個紅綠燈,就看見便利商店了。
  • 向xiàng:⋯⋯に向かって
    • 「向」の直後に「前、後、左、右、東、南、上、下」などのような方向に関する語が来て、動作の方向を表す。例:站在那棟房子前,向前看,會看到一條河。/ 向後轉!
    • 動作の目標(人や物)を表す。例:警察向民眾說明賽車的原因。/ 這條路通往山頂。/ 向命運挑戰。
  • 朝cháo:⋯⋯に向かって
    • 動作の方向を表す。「朝 + [方位詞、場所名詞]」の形で用いる。「朝著」という形は単音節方位詞の前には用いない。また「著」の有無は意味に関係しない。例:朝前看 / 人群陸續朝飛機場走去。/ 朝著冠軍加油!
    • 動作の対象(相手)を表す。「朝+[人称代名詞や人を指す名詞など]+[身体動作を示す具体的動詞]」の形で使われる。「朝」が「著」を伴う場合は、「朝著」の後ろは複音節語になる。例:他朝我打了個招呼。/ 他背朝著我坐下了。

動作の対象や関係を表す

  • 跟gēn、和hàn、同tóng、與yǔ:⋯⋯と、⋯⋯に
    • 動作を共にする相手を導く。例:我想今天跟你一起吃飯。/ 我和家人一起去旅行。/ 我去年和他住在一起。/ 我們要與世界各國和平共處。
    • 動作の向かう相手を導く。例:他跟太太不常說話。/ 他正在和孩子講述那些動人的故事。/ 我同他商量一下。/ 母親教導我與困難奮鬥的經驗。
    • 提供元を導く。人や事物から恩恵を得る、人から何かを聞き出す、何かを学ぶことを表す。例:我跟他借了一百塊錢。/ 我跟你打聽一件事。
    • 関係の及ぶ対象を導く。例:我跟他沒有關係。/ 我和這件事沒關係。/ 我同這件事無關。/ 輕工業與人民的日常生活有著密切的關係。
    • 比較の対象を導く(比較を表す「比、相同、不同、一樣、差不多、相比、相像」などと組み合わされる)。例:我跟你的看法有點不同。/ 這本書和那本書不一樣。/ 同去年同期相比,還差得遠。 / 這種東西與石頭一樣堅硬。
    • 否定辞の位置と意味の違い:「不」を介詞の後に用いる時は客観的に事実を述べるだけだが、介詞の前に用いる時は話し手の意志を表す。
  • 對duì:⋯⋯に対して、⋯⋯について
    • 動作(陳述)の向けられる相手や対象を表す。例:他對你說了什麼?
    • 対応や待遇、対人関係について表す。例:他對人很熱情。
    • 関係する人や事物(陳述が誰にまたは何に及ぶのか)を示す。例:他對語言學有興趣。/ 我們應該對黨、對人民忠誠老實。
    • 主題(人)を強調し、主題(人)の主観的な意見を表す。「對⋯⋯來說(⋯⋯について言えば、⋯⋯にとっては)」または「對⋯⋯說來」の形で使われる。例:對哥哥來說,運動是一件十分容易的事。(主題が人)
    • 「對⋯⋯的」の形で定語となる。例:我對他的印像不錯。
  • 對於duìyú:⋯⋯に関して
    • 動作(陳述)の対象を示す。例:我對於這個問題還沒有完全理解。
    • 関係する人や事物(陳述の向けられる相手または及ぶ範囲)を示す。例:我們對於他們表示深切的謝意。/ 對於國際情勢,大家都談了自己的看法。/ 適當的運動,對身體是必要的。
    • 主題(人や物)を強調する。「對於⋯⋯而言(⋯⋯Aに関して言えば)」の形で使われる。例:我們對於他們表示深切的謝意。(主題が人)/ 對產品經理而言,提出問題與解決問題的能力,哪個比較重要?(主題が物事)
    • 「對於⋯⋯的」の形で定語となる。例:他對於文學的興趣十分濃厚。
    • 「對於⋯⋯的[名詞]」を文章の表題に用いて「⋯⋯に関しての[名詞]、⋯⋯について」を意味する。例:對於過敏物質的處理方式
  • 向xiàng、朝cháo:⋯⋯に向かって、⋯⋯に
    • 動作の向かう対象(人や物)を導く。例:他向我介紹過你的情況。/ 向命運挑戰。
    • 提供元を導く。人や事物から恩恵を得る、人から何かを聞き出す、何かを学ぶことを表す。例:不懂的問題可以向老師請教。
  • 朝cháo:⋯⋯に向かって、⋯⋯に
    • 動作の向かう対象(人)を導く。「朝+[人称代名詞や人を指す名詞など]+[身体動作を示す具体的動詞]」の形で使われる。「朝」が「著」を伴う場合は、「朝著」の後ろは複音節語になる。例:他朝我打了個招呼。/ 他背朝著我坐下了。
  • 給gěi:⋯⋯に、⋯⋯に対して
    • 動作の対象を導く。例:學生給老師行了個禮。

動作行為の受け手を表す

  • 給gěi:⋯⋯に、⋯⋯のために(伝達や物などの受け手、受益者、動作行為の被害者を示す)
    • 手紙・電話などでの伝達や物などの受け手を導く。例:請在抵達車站後立即打電話給我。/ 我買給朋友一些禮物了。
    • 動作行為の受益者を導く。例:醫生給大家檢查身體。
    • 動作行為の被害者を導く。例:他把杯子給你打破了。
    • 強い叱責口調の命令文に用いる(給+我+[動詞])。例:快給我進來!
  • 為wèi:⋯⋯のために
    • 動作行為の受益者を示す。例:為人民服務。/ 為他們買健康保險。
  • 替tì:⋯⋯のために
    • 動作行為の受益者を示す。例:大家替他高興。/ 她們在國際賽事中替祖國爭取了榮譽。

動作の相手、行動を共にする相手、事物の提供元を表す

  • 跟gēn、和hàn、同tóng、與yǔ:⋯⋯と
    • 動作を共にする相手を導く。例:「動作の対象や関係を表す」の「動作を共にする相手を導く。」を参照してください。
  • 跟gēn、和hàn、同tóng、與yǔ、向xiàng、朝cháo、對duì、給gěi:⋯⋯と、⋯⋯に
    • 動作の向かう相手を導く。例:全ての語が「動作の対象や関係を表す」と同じ使い方で、「跟gēn、和hàn、同tóng、與yǔ」は「動作の向かう相手を導く。」を参照し、「對duì」は「対応や待遇、対人関係について表す。」を参照し、「向xiàng、朝cháo」は「動作の向かう対象(人や物)を導く。」を参照し、「給gěi」「動作の対象を導く。」を参照してください。
  • 跟gēn、和hàn、同tóng、與yǔ、向xiàng:⋯⋯と、⋯⋯に
    • 提供元を導く。人や事物から恩恵を得る、人から何かを聞き出す、何かを学ぶことを表す。例:「動作の対象や関係を表す」の「提供元を導く。」を参照してください。
  • 跟gēn、和hàn、同tóng、與yǔ:
    • 比較の対象を導く。例:「動作の対象や関係を表す」の「比較の対象を導く。」を参照してください。

起点や始点を表す

  • 從cóng、由yóu:⋯⋯から(“由”は書き言葉でよく使われる)
    • 場所や出所を示す。例:我剛從學校回來。/ 由人民公園出發。
    • 時間の始まりを示す。例:我從八點鐘就在這裡等他。/ 由今天開始。
    • 範囲を示す。例:傳統市場從早上六點開始到九點結束。/ 由早上一直工作到晚上。由南到北。
    • 発展・変化の始点を示す。例:從根本上改變了農村的經濟關係。/ 青蛙是由蝌蚪變來的。
  • 自zì:(書き言葉)
    • 場所や出所を示す。例:本次列車自南京開往北京。
    • 時間の始まりを示す。例:他自小在這裡長大。
  • 自從zìcóng:
    • 「過去の時点」を起点とする。例:自從去年秋天到現在,

除外を表す

  • 除了chúle:⋯⋯を除いて、⋯⋯のほかに、⋯⋯だけでなく(“外wài、以外yǐwài、之外zhīwài、而外érwài“を後ろによく伴う)
  • 除chú:「除了」の書き言葉
    • 特別な例を除き、その他は同様であることを強調する(“都、全”を後節に伴う)。例:這個博物館除了星期一以外,每天都開放。
    • 既知のものを除いて、それ以外のものを補う(“還、再、也”を後ろに伴う)。例:除了他以外,還有兩個人。
    • 唯一の特別な例であることを強調する(“不、沒有”を伴う)。例:每天晚上我除了學英文外,沒有別的事。

動作主(行為者)を表す

  • 被bèi、讓ràng、叫jiào
    • 受身表現で行為の主体を導く。例:「文型」の「受身文」を参照してください。
    • 「把」構文と併用される。例:「文型」の「『把』構文」を参照してください。
  • 給gěi:⋯⋯に
    • 受身表現で行為の主体を導く。例:「文型」の「受身文」を参照してください。
  • 為wèi:⋯⋯によって(書き言葉)
    • 「為/被 +[名詞]+ 所 +[動詞]」の形で受身文を形成する。例:茅屋為秋風所破。
  • 於yú:⋯⋯に(書き言葉)
    • 「[動詞]+於+[動作主]」の形で受身文を形成する。例:「文型」の「受身文」を参照してください。
  • 由yóu(少し丁寧な言い方)
    • 動作主または動作の行為者を示す。例:由小玲介紹詳細經過。

目的を表す

  • 為了wèile:⋯⋯のために
    • 例:為了提高產品質量,工廠大力改進了生產設備。
  • 為wèi:⋯⋯のために(書き言葉)
    • 「為⋯⋯(而)~」の形で行為の目的を示す。例:他們為建設自己的祖國(而)努力奮鬥。
    • 主語の前に「為+[動詞/形容詞]+起見」の形で置かれて目的を強調する。例:為省事起見,就請你通知他。
    • 「是為了⋯⋯」の形で目的を後置する。例:我們這樣做,是為了你。

原因や理由を表す

  • 因為yīnwèi、由於yóuyú、因yīn、為wèi、以yǐ:⋯⋯なので(“而“を後ろによく伴う)
    • 原因や理由を表す。例:因為這件事,我受到了批評。/ 由於勞動,語言產生了。/ 他今天因病請假。/ 我們都為這件事感到高興。/ 他為自己的懷才不遇而憤忿不平。/ 馬來西亞以盛產橡膠聞名於世。/ 不以失敗自餒,不以成功自滿。
  • 「因為」と「由於」は「是 因為/由於⋯⋯」の形で「理由」を後置する。例:他不換工作是因為考量年齡及未來計劃。/ 他能夠考上研究生,主要是由於他平時的刻苦鑽研。
  • 「因」は「因+[単音節名詞]+[動詞]」の形で使われる。例:會議因故延期舉行。

根拠を表す

  • 根拠とする規準や基準を表す
    • 按照ànzhào:⋯⋯に基づいて,⋯⋯に照らして(“按照“の後ろに置けるのは複音節名詞だけ)例:按照國家的規定,學生每學期都要繳交學雜費。
    • 按àn:「按照」の省略形(書き言葉)
    • 根據gēnjù:⋯⋯に基づいて、⋯⋯によれば。例:根據憲法,我國各民族都是平等的。
    • 據jù:「根據」の省略形(書き言葉)
    • 依照yīzhào:⋯⋯に従って、⋯⋯に基づいて(“依照“の後ろに置けるのは複音節名詞だけ)例:必須依照計劃進行。
    • 依據yījù:⋯⋯に従って、⋯⋯に基づいて。例:老師依據班委會反映的情況,又親自做了實際調查,才著手處理問題。
    • 依yī:「依照、依據」の省略形(書き言葉)
    • 照zhào:⋯⋯に照らして、⋯⋯通りに(書き言葉)例:判決照例要報請上級核准。
    • 以yǐ:⋯⋯によって、⋯⋯に従って(書き言葉)例:以工計酬。
    • 憑píng:(書き言葉)例:他憑常識便作出了正確的判斷。
    • 由yóu:(書き言葉)例:由讀者來信看,這種書很受歡迎。
    • 論lùn:(書き言葉)例:論件計酬。/論技術,誰也比不過他。
  • 「按、依、照、憑」は「著」を伴うこともあるが、それらの目的語が単音節名詞の場合は「著」を伴わない。例:按著規則。/ 按人定量。/ 一切都依著他的指示進行。/ 誰都該依法辦事。
  • 「按、據、依、照、由」などは「看、說、講」と一緒に使われて、意見、見方、理屈、根拠などを示す。このパターンは通常、文頭に置かれて、一緒に使われた動詞の後ろにポーズを置いて独立した句とする。また、その動詞の後ろに「來」を伴うこともある。例:按本質來說,這個市場的發展會循序漸進。/ 據我看,這種不良的社會風氣很快就會改變的。/ 依我看,大家的水平都不低。/ 照他說來,那是他特有的果敢。/ 由工商普查資料看臺灣中小企業之發展特色與變遷趨勢。
  • 「按、照、以、論」は、ある単位を計算の基準とすることを表す。例:按人定量。/ 按月結算。/ 照每年增產10%計算。/ 平均每戶以四口計算。/ 我們工廠論件計資。/ 西瓜論斤出售。
  • 定型表現:按期交工 / 據理交涉 / 據統計 / 依法行政原則

過程、手続、媒介、手段を表す

  • 經過jīngguò:⋯⋯を通じて、⋯⋯を経て、⋯⋯の結果。例:經過幾年的努力,我們才完成了任務。
  • 經jīng:「經過」の省略形(書き言葉)
  • 通過tōngguò:⋯⋯を通じて、⋯⋯を通して、⋯⋯によって。例:我們透過譯者交談了半個小時。/ 透過老張介紹,我認識了他。

手段や方法を表す

  • 用yòng:⋯⋯で、⋯⋯によって。例:用鉛筆寫字。/ 用手輕輕拍桌子。/ 要用正確的思想武裝我們的頭腦。/ 用不同的方法(去)解決不同的矛盾。
  • 拿ná:⋯⋯を用いて、⋯⋯で。(話し言葉)例:拿布縫衣服。/ 別拿話激他,讓他生氣
  • 把bǎ:⋯⋯で。(適用範囲は狭い)例:船家把繩子綁了船。
  • 將jiāng:⋯⋯で、⋯⋯を用いて。(昔の書き言葉)例:將雞蛋碰觸石頭,哪有不碎的?

処置を表す

  • 把bǎ:⋯⋯を。例:我把他批評了。/ 請把書放在桌上。
  • 將jiāng:(書き言葉)例:將書拿來。/ 不得將參考書攜帶出閱覽室。/ 他已經將照相機寄來修理。
  • 拿ná:⋯⋯を。「拿」が修飾する動詞(句)は「當(見なす)、沒辦法(どうにもできない)、怎麼樣(どうにかする)、開心(からかう)、開玩笑(笑いものにする)」など少数のものに限られる。例:他拿我的話當兒戲。/ 真拿他們沒辦法。/ 你拿我怎麼樣?/ 別老是拿他開玩笑。
  • 管guǎn:⋯⋯を。「管 A 叫 B(AをBと呼ぶ)」の形で、人や事物の名称を表す。例:那位老太太,大伙兒管她叫李媽媽

関係を表す

  • 對duì:⋯⋯に対して、⋯⋯について
    • 対応や待遇、対人関係について表す。例:「動作の対象や関係を表す」の「対応や待遇、対人関係について表す。」を参照してください。
    • 関係する人や事物(陳述が誰にまたは何に及ぶのか)を示す。例:「動作の対象や関係を表す」の「対応や待遇、対人関係について表す。」および「関係する人や事物(陳述が誰にまたは何に及ぶのか)を示す」を参照してください。
    • 主題(人)を強調し、主題(人)の主観的な意見を表す。例:「動作の対象や関係を表す」の「主題(人)を強調し、主題(人)の主観的な意見を表す。」を参照してください。
    • 「對⋯⋯的」の形で定語となる。例:「動作の対象や関係を表す」の『「對⋯⋯的」の形で定語となる。』を参照してください。
  • 對於duìyú:⋯⋯に対して、⋯⋯について
    • 関係する人や事物(陳述の向けられる相手または及ぶ範囲)を示す。例:「動作の対象や関係を表す」の「関係する人や事物(陳述の向けられる相手または及ぶ範囲)を示す。」を参照してください。
    • 主題(人や物)を強調する。例:「動作の対象や関係を表す」の「主題(人や物)を強調する。」を参照してください。
    • 「對於⋯⋯的」の形で定語となる。例:「動作の対象や関係を表す」の『「對於⋯⋯的」の形で定語となる。』を参照してください。
    • 「對於⋯⋯的[名詞]」を文章の表題に用いて「⋯⋯に関しての[名詞]、⋯⋯について」を意味する。例:對於過敏物質的處理方式
  • c.f.「對」と「對於」の相違点
    1. 「對」句は助動詞や副詞の後ろにも置けるが、「對於」句は助動詞や副詞の後ろには置けない。どちらも主語の前には置ける。
      • 我們對這件事會作出安排的。(助動詞の前後)
      • 大家對這個問題都很有興趣。(副詞の前後)
      • 對這件事,我們會作出安排的。(主語の前)
      • 大家對於這個問題都很有興趣。(副詞の前)
      • 對於這個問題,大家都很感興趣。(主語の前)
    2. 「對」には「対応や待遇、対人関係について表す。」の意味を持っているが、「對於」には「対応や待遇、対人関係について表す。」の意味がない。
      • 他對人很熱情。(対人関係)
    3. 「對⋯⋯來說」は話し言葉で「⋯⋯」部分には[人]だけしか置けない。一方で、「對於⋯⋯而言」はとてもフォーマルな書き言葉で、「⋯⋯」部分には[人]と[物]も置ける。
      • 對哥哥來說,運動是一件十分容易的事。(人)
      • 對大家來說,這題目都還太困難了。(人)
      • 我們對於他們表示深切的謝意。(人)
      • 對產品經理而言,提出問題與解決問題的能力,哪個比較重要?(物事)

介詞の「對」は動詞の「對」から派生したものなので、動詞としての性質が強く残っている。そのため、「對」が動作行為の方向や目標を導く(“向“の意味を示す)時、あるいは人と人、人と物の相対する関係を示す(“對待”の意味を示す)時、「對」は「對於」と置き換えることができない。「對於」は「對」の文法化過程から派生したものであり、それゆえに用途が限定されている。

  • 關於guānyú:⋯⋯に関して、⋯⋯に関する
    • 関係のある事物を示す。例:關於這個問題,我們可以參考下列書刊。
    • 「關於⋯⋯」を文章の表題に用いて「⋯⋯に関して、⋯⋯について」を意味する。例:《關於提高教學品質》(《 》は題名を表す「標點符號[註2]」)
      • [註2]標點符號(標点符号):句読点、疑問符、感嘆符などの文章記号の総称。日本語では「くぎり符号」と呼ばれる。
    • 名詞を修飾する。「關於⋯⋯的」の形で「⋯⋯に関する、⋯⋯についての」を意味する。例:最近讀了一些關於國際議題的資料。
    • 述語に用いる。「是關於⋯⋯的」の形で「⋯⋯に関するものである、⋯⋯についてである」を意味する。例:今天廠裡開了一個會,是關於節約用煤的。
  • c.f.「對於」と「關於」の相違点
    1. 明確な対象を指し示す場合には「對於」を用い、関連や関係を表す場合には「關於」を用いる。
      • 對於文化遺產,我們必須研究分析。(明確な対象)
      • 關於牽牛織女星,民間有個美麗的傳說。(関係)
    2. 「對於」句は文の最初でも途中でも使用できるが、「關於」句は文の最初でのみ使用される。 例えば「我對於這件事的前因後果非常清楚。」は「*我關於這件事的前因後果非常清楚。」とは言えない。
    3. 「對於」と「關於」はいずれも文章の表題に用いて「⋯⋯に関して、⋯⋯について」を意味するが、「關於」はヒントを与える性質を持っているため、(「關於」を用いた介詞句の後ろに名詞を必要とせず)「關於」を用いた介詞句単独で文章の表題として使用できる。一方で、「對於」は「對於⋯⋯的[名詞]」のように「對於」を用いた介詞句の後ろに[名詞]が必要となり、一般に単独で文章の表題として使用できない。例:對於過敏物質的處理方式 / 關於提高教學品質
  • 至於zhìyú:⋯⋯に至っては、⋯⋯となると、⋯⋯については
    • 後節、下文の初めや段落が変わる時に用いて、前の話題と関係のある別の話題に転じる場合に使われる。接続詞に分類されることもある。例:文章要寫得通順暢達,至於生動感人,那是進一步的要求。/ 這件外套的大小,樣子都很合適。至於顏色,我覺得淺了一點。
  • c.f.「對於」「關於」と「至於」の相違点
    • 「至於」は関連する事柄を追加したり、話題を転換するものだが、「對於」と「關於」にはこのような機能はない。
  • 就jiù:⋯⋯について
    • 論述、研究、整理などのテーマや範囲を導く。例:大家就創作方法進行熱烈的討論。
    • 分析したり説明したりする場合のテーマや範囲を導く。例:這本書就內容來說,值得一看。
      • 就⋯⋯說/來說/說來:⋯⋯ついて言うと
      • 就⋯⋯看/來看/看來:⋯⋯ついて言うと
      • 就⋯⋯而言:⋯⋯について言えば
      • 就⋯⋯而論:⋯⋯から論ずれば
  • 跟gēn、和hàn、同tóng、與yǔ:⋯⋯と
    • 「動作の対象や関係を表す」の「関係の及ぶ対象を導く。」を参照してください。

間隔を表す

  • 離lí、距jù:⋯⋯から(“離“は“著“を直後に伴うこともある)
    • 二点間の空間的な隔たり、時間的な隔たり、抽象的概念の隔たりを表す。
      1. 空間的な隔たり(ある場所からの距離)を示す。例:我家離博物館不遠。/ 學校離我家有一里地。/ 距橋頭只有五十步的光景。/ 此處距郵局不足一英里。/ 飯店東距市區3公里,離名的天涯海角風景區6公里,到鳳凰國際機場僅2公里,交通極為方便。
      2. 時間的な隔たり(現在からある時点までの期間)を示す。例:離上課還有十分鐘。/ 距今已有二年。/ 眼看二十二點了,距離零點還有兩小時。
      3. 抽象的概念の隔たり(現状と目標、標準、要求などの隔たり)を示す。例:他的成績離錄取線還差一點。

経路を表す

  • 順shùn、沿yán:⋯⋯に沿って(抽象的な物事に「沿う」場合は必ず直後に“著“を伴う)
    • 動作がどのような場所、経路、方向に沿うかを示す。例:順著大路往東走。/ 居民們沿河邊栽了柳樹。/ 你沿著那條新修的道路走
    • 動作が順序や人の考えに沿ってなされることを示す。例:請大家順著次序參觀。/ 順著他的意思處理問題。/ 全國人民正沿著黨指引的方向奮勇前進。

地点や時点を表す

  • 在zài⋯⋯で、⋯⋯に、⋯⋯には(動詞の前後のいずれにも置ける、後ろに単独の時間詞を置ける)
    1. 場所を表す語を導く
      • 動作行為が行われる場所や、事物や現象が存在する場所を示す。例:這種服裝在台北很流行。/ 在休息室裡,大家談得很高興。/ 我在宿舍裡面。/ 我爸爸在家做飯。
      • 動詞の後ろに用いて、動作の主体または受け手が動作の結果として到達する場所、方向、位置を示す。例:他住在北京。/ 履歷表先留在我這裡。有適合的工作再告訴你。
      • c.f.「在」位置によって意味が異なる場合がある。例えば「他在馬背上打了一槍。(彼は馬の上で1発撃った。)」と「他一槍打在馬背上。(彼は馬の背中を1発撃った。)」のように。前者は「彼が撃った位置」を強調し、後者は「命中した位置」を述べている。
      • c.f. 述語動詞がアスペクト助詞「了、著、過」、目的語、方向補語を伴う場合は、「在⋯⋯」を常に動詞の前に用い、動詞の後ろに用いることはできない。例えば「自行車在棚子裡放著。」「自行車在棚子裡放了一年。」「他在北京住過。」「他在北京住下去。」と言うことはできても、「*自行車放著在棚子裡。」「*自行車放了一年在棚子裡。」「*他住過在北京。」「*他住下去在北京。」と言うことはできない。
    2. 時間を表す語を導く
      • 「在+ [時間を示す語句]」を述語動詞、形容詞の前や文頭に用いて、事件、動作行為の発生や持続する時間を示す。⋯⋯に、⋯⋯には。例:火車在下午四點半到站。/ 在那時,病情還不嚴重。/ 在十八、九億年以前,地球上已出現了植物。
  • 於yú:⋯⋯に、⋯⋯において(書き言葉、動詞の前後のいずれにも置ける、後ろに単独の時間詞を置ける)
    • 場所や時間を表す語を導く(動作や事態の発生する場所、時間を示す)
      • 「[動詞]+ 於」の形で用いる。魯迅1881年生於紹興。/ 中華人民共和國成立於1949年。
      • 「於 +[名詞]+[動詞]」の形で用いる。運動會將於五月十日舉行。/ 通知已於昨日發出。
      • c.f. 場所を示す場合には「於 +[名詞]+[動詞]」の形より「[動詞]+ 於」の形の方が一般的である。
  • 當dāng(書き言葉)
    1. 時間を表す
      1. 「當⋯⋯時(的時候)」の形で「⋯⋯の時に」を意味する。例:當我回來的時候,他已經睡著了。
      2. 「當⋯⋯以前(之前)、當⋯⋯以後(之後)」の形で「⋯⋯以前に、⋯⋯以後に」を意味する。例:當這事實沒有發生以前,誰也不會想到要演這般的慘劇。/ 當我們認真度過每一天以後,我相信我們的學業成績必將越來越好。
      3. 「當」の前に「正」を伴って動作行為の発生時を強調する。「ちょうど⋯⋯の時に」を意味する。例:正當黃昏時分,天忽然下起雨來了。
    2. 場所を表す:⋯⋯に向かって、⋯⋯の目の前で
      1. 「當著」の形で表す。例:你要當著大家說清楚。
      2. 「當(著) +[名詞]+ 面」の形で表す。例:請你把情況當著他們的面再講一講。

機会を表す

  • 趁chèn、就jiù:⋯⋯のうちに、⋯⋯に乗じて、⋯⋯を利用して
    1. 「趁、就」の目的語が2音節以上の場合、「趁、就」は「著」をよく伴う。
      • 我軍趁著漆黑的夜色,悄悄接近敵人的陣地。/ 就著春節回家探親的機會,對當地的方言詞彙作了調查。
    2. 「趁、就」の目的語には名詞だけでなく、形容詞、動詞句、節もなれる。
      • 請讓我趁此機會講幾句話。/ 他趁著開車前的一個鐘頭,把這本小說一目十行地瀏覽了一遍。/ 趁能睡的時候多睡一覺。/ 就著美味的潮菜,感受著汕頭經濟特區的日新月異,是一件樂事。(名詞)
      • 趁熱喝吧。/ 我們得不失時機,得趁熱打鐵。(形容詞)
      • 趁還沒換裝,他匆匆翻了一下文件。(動詞句)
      • 趁他還沒來,我先告訴你。/ 就著原有地勢挖成盆形,盆底作比賽場,四周則順坡築成看台,每一處莫不巧借地形,獨運匠心。(節)

包括や包含を表す「連lián」

  • ⋯⋯を加えて、⋯⋯を含めて、⋯⋯込みで。例:這輛汽車連司機能坐五個人。/ 連皮吃。
    • 「連」が導く句を前置することができる。例:連一技之長都沒有,你怎麼安身立命?
    • 「帶、在內、一起、一共」などを伴う。例:我寧可連身體帶靈魂都下地獄,也不再看你一眼。/ 他吃魚連骨頭都一起吃了。/ 連你一共多少人?
    • 極端な例をあげて強調する。強調表現を作る副詞「都、也」をよく伴う。詳しくは『極端な例をあげて強調する「連」』を参照してください。例:她走時連句感謝話都沒說。/ 我摔角後連路也走不動了。

極端な例をあげて強調する「連lián」

  • 〜でさえも
    • 動作行為の主体を強調する:連 +[名詞]+ 都/也/還⋯⋯。例:連我都知道了,他當然知道。
    • 動作行為の対象を強調する:連+[名詞]+ 都/也/還⋯⋯。例:天上沒有月亮,連星星也沒有。
    • 述語の否定を強調する:連 +[動詞]+ 都/也 + 不(沒) +[動詞](前後の動詞は同じもので、後半の動詞は省略されることもある)例:他連看都沒看。
    • 疑問代詞を含む目的語節に用いて強調する:連 +[疑問代詞を含む節]都/也/還⋯⋯。例:連他住在哪裡我也不知道。
    • 否定を強調する:連一 +[量詞]+ 都/也⋯⋯。例:連一次都沒去過。

手段や方法を表す「用yòng」

「用」は意味的に抽象化が進み、動詞としてのみならず介詞としての役割も有している。(※「手段や方法を表す」も同時に参照してください。)

  • 動詞句が複数並ぶ連動文の前の動詞句の動詞に使用されて、後ろの動詞句が表す動作行為の道具、手段、材料を表す。⋯⋯で。例:用鉛筆寫字。/ 用手輕輕拍桌子。
  • 抽象名詞(“觀點、精神、思想、態度、行動、標準“など)を伴って、方法、方式、規準などを示す。⋯⋯で、⋯⋯によって、⋯⋯でもって。例:要用正確的思想武裝我們的頭腦。
  • 「用」が導く句と述語動詞の間に「來、去」が使われることもある。「來」は道具(観点)などの使用が話し手に向かってなされること、「去」は道具(観点)などの使用が話し手から離れる方向でなされることを示す。例:元末明初的文人用白話(來)寫小說。/ 用不同的方法(去)解決不同的矛盾。
  • c.f. 動詞「用」を使った形式上の類似表現
    1. 「用」と「來、以」を組み合わせて「用來、用以」とし、述語動詞の前に使用して「上文で述べられているものを用いて⋯⋯する」を意味する。
      • 用來:それによって⋯⋯する。例:指南針可以用來指示方向。
      • 用以:⋯⋯のためにそれを用いる。例:「其他」這個詞,可用以指人,也可用以指物。
    2. 「用作 +[目的語]」の形で使われて「用いて⋯⋯とする、⋯⋯として用いる、⋯⋯に用いる」を意味する。例:臨時把食堂當作會場。
    3. 「用+在/於⋯⋯」の形で使われて「⋯⋯のところに用いる、⋯⋯において用いる」を意味する。例:錢要用在適當的地方。/ 有些詞語只用於口語,而有些詞語只用於書面語。