中国語の単語(音節)構造の大枠は理解したけど、それぞれの要素について知りたいなぁ
韻母(Finals)について知りたいんだけど
韻母(Finals)は単語(音節)構造の大事な要素だよね
理解するの難しいかな?
そんなことないよ。基本をおさえれば問題なし!
というわけで、今回は中国語・華語の韻母(Finals)についてお伝えします
- 韻母(Finals)がわかる
- 韻母(Finals)の発音練習ができる
単語(音節)構造の基本が知りたい方へ
この記事は、単語(音節)構造の要素「声母(Initials)・韻母(Finals)・声調(Tones)」いずれかの各論です。単語(音節)構造自体の基本が知りたい方や曖昧な方は、先に下記の記事を参照してください。
用語には英語を併記
私は台湾の語学センターで中国語学習を開始しました。初学のうちは英語で授業を受けたので、発音の用語も英語で覚えました。帰国後、覚えた用語の日本語での用語名を調べましたが、英語の方が直感的で理解しやすいと感じています。そのため、理解のしやすさを考慮して、用語には英語も併記しています。例えば「声母(Initals)」の場合、「声母」が日本語の用語名、「Initials」が英語名です。
韻母(Finals)
それでは、韻母(Finals)についてお伝えしていきます。
韻母(Finals)とは
韻母(Finals)とは、中国語の音韻学で「先頭の音(頭子音)以外の部分」のことで、主母音前にくる半母音・中間母音(介音)、主母音、最終母音or子音(尾音)の組み合わせで成り立っています。簡単い言うと「単語の声母(Initials)を除く残りの後方の主母音を中心とした部分」のことです。英語では「Finals」と言うので「後ろの部分」であることを連想しやすいです。
韻母(Finals)とは
単語の声母(Initials)を除く残りの「後方の主母音を中心とした部分」
韻母(Finals)の種類
中国語は、単母音6個、特殊母音1個、複母音(二重母音・三重母音)13個、鼻音16個の合計36個の韻母(Finals)を持っています。
まずこの章で覚えてほしい内容をまとめておきます。
中国語の韻母(Finals)
- 基本的な韻母(Finals)は単母音「a, o, e, i, u, ü」の6つ
- 「半母音・中間母音(介音) + 主母音 + 最終母音or子音(尾音)」の組み合わせによって、多種の韻母(Finals)へと派生
- 「a, o, e, i, u, ü」は発音時の開口具合(開—>閉)の順番で並んでいて、この順番通りに覚える
韻母(Finals)とその派生
中国語の基本的な韻母(Finals)は単母音「a, o, e, i, u, ü」の6つです。さらに、半母音・中間母音(介音)、主母音、最終母音or子音(尾音)の組み合わせによって、特殊母音1個、複母音(二重母音・三重母音)13個、鼻音16個の合計36個という多種の韻母(Finals)に派生していきます。
介音は「 i, u, ü」を発音する時にそれぞれの前に弱く発音される「y(i), w(u), y(ü)」のことです。
韻母(Finals)図表
中国語の韻母(Finals)をまとめたものが下図です。
韻母(Finals)図表
- 唇の絵:韻母(Finals)発音時の開口具合
- 縦列:最初に発音する韻母(Finals)で分類
- 横列:韻母(Finals)の種類で分類
- 単母音:1つの音
- 複母音:単母音を複数重ねた音
- 鼻音:鼻からも息を抜きながら発音する音
単母音発音時の開口具合と声調記号(Tone marks)の関係
基本的な韻母(Finals)を「a, o, e, i, u, ü」と順番に並べて書いたことと、その並びの順番で韻母(Finals)図表の一番上に単母音発音時の「口の形・口の開き具合」の絵を描いたことには理由があります。声調記号(Tone marks)を表記する時、発音時に開口が一番大きい母音の上に声調記号(Tone marks)を書くからです。ですから「(開)a, o, e, i, u, ü(閉)」の順番で覚えてください。
単母音発音時の開口具合と声調記号(Tone marks)の優先順位
優先順位:高(開)← a, o, e, i, u, ü →(閉)低
詳しい声調記号(Tone marks)の表記方法ついては以下の記事を参照してください。
韻母(Finals)の発音方法
ここでは中国語の基本的な単母音「a, o, e, i, u, ü」の発音方法について説明します。
aの発音
「a」は一番口を開いて発音する音です。口が「O」の字になるぐらい大きく開いて息を吐き出して発音します。日本語の「あ」よりも口を開いて発音するイメージです。
oの発音
最初は口をすぼめて息を吐き出し発音します。口をすぼめて発音したまま口を「O」の形になるぐらい開いていきます。中国語の「o」は日本語の「お」の発音方法とは異なり、口の形を変化させながら発音します。口の形の変化は「u」の発音方法と逆の流れです。
eの発音
口をリラックスした状態で、やや横に開いて息を吐き出して発音します。中国語では「e」を発音する時の口の状態が「自然な状態」、いわゆるニュートラルな状態とされています。日本語の「あ」と「え」の中間みたいな音です。
iの発音
やや横に開いて息を吐き出して発音します。「i」は日本語の「い」と似ている発音方法です。
uの発音
最初は「O」の形になるぐらい開いて息を吐き出し発音します。発音したままの流れで口をすぼめていきます。中国語の「u」は日本語の「う」の発音方法とは異なり、口の形を変化させながら発音します。口の形の変化は「o」の発音方法と逆の流れです。
üの発音
「ü」は唇をやや閉じ、さらに唇にチカラを入れて発音します。コツとしては「下唇と顎に力を入れる」感じです。日本語の「ゆ」の発音方法とは異なり、口元にかなり力を入れて発音します。
さらに詳しい中国語の韻母(Finals)の発音方法は下記の記事を参照してください。
それぞれの記事には、発音のコツや音声データも添付していますので、発音練習する際に参考にしてみてください。
日本人にとって発音が難しい単母音は「e, ü」です。なぜならば、日本語にはない発音方法だからです。「u, o」も日本人が発音を注意しなければならない音です。日本語の「う、お」とは違って発音中に口の形が変化するのですが、日本人は「う、お」のように口の形を固定したまま発音してしまいがちです。
ここまでで、韻母(Finals)の基本的について全てお伝えしました。
次の章では、さらに母音図表を利用して韻母(Finals)の発音を詳細に説明します。かなり専門的な内容になるので、気になる方だけ見てみてください。
韻母(Finals)発音方法の詳細説明
母音図表の利用
言語学者は、それぞれの言語についての発音方法を図表で説明してきました。中国語も同様で、中国語の韻母(Finals)の発音方法を説明した図表が存在しています。
ここからは、その中国語の母音図表を見ながら、韻母(Finals)発音について細かく見ていきましょう。
中国語の母音図表について
中国語の母音図または中国語の母音図表は、中国語母音の略図であり、通常は標準中国語を指します。最も古い中国語の母音図は、1920年に中国人の言語学者、易作霖(Yì Zuòlín)によって公開されました。三年後、ダニエル・ジョーンズ(Daniel Jones)が1917年に有名な「基本母音図(cardinal vowel diagram)」を出版しました。易作霖はこれらの図を「單(単)韻/複韻構成図表」と呼んでいます。中国の単母音と二母音を示す図です。
台形の英語の母音図とは異なり、中国語の母音図は三角形です。
単母音の図表
この図で使われている発音記号は「注音記号」、「注音符號」または単に 「Bopomofo」として知られています。
この図には、6個の母音または単韻が描かれています。それらは以下です。
- ㄧ (IPA [i]), as in ㄧˋ (易yì)
- ㄨ (IPA [u]), as in ㄨˋ (霧wù)
- ㄦ (IPA [ɚ]), as in ㄦˋ (二èr)
- ㄛ (IPA [o]), as in ㄆㄛˋ (破pò, 破れる)
- ㄜ (IPA [ɤ]), as in ㄜˋ (餓è, お腹が空いている)
- ㄚ (IPA [a]), as in ㄆㄚˋ (怕pà, 恐ろしい)
この図では、母音の高さ(閉、半閉、半開、開)の4段階、母音の背面(前面、中央、方面)の3段階、母音の丸み(広がり、自然、丸)の3段階、を利用していることに注意してください。 ㄦ(er)の配置には疑問があるかもしれませんが、他のすべての母音は、あるべき位置にあると一般的に言われています。
複母音の図表
ここからは複母音について説明してきます。
(※注)図の見方:単母音と同じ三角形の母音図表が二重母音(複合韻または複韻)を表すためにも使用され、各二重母音の開始位置と終了位置を示す矢印が付いています。
下降二重母音の図表
下降二重母音は、より目立つ (より高いピッチまたは音量) 母音の質で始まり、より目立たない半母音で終わります。
この図には、6個の下降二重母音が示されています。それらは以下です。
- ㄩ (IPA [y]), as in ㄩˋ (玉yù)
- ㄝ (IPA [e̞]), as in ㄧㄝˋ (夜yè)
- ㄟ (IPA [ei̯]), as in ㄌㄟˋ (累lèi, 疲れている)
- ㄡ (IPA [oʊ̯]), as in ㄉㄡˋ (豆dòu)
- ㄞ (IPA [ai̯]), as in ㄉㄞˋ (帶dài)
- ㄠ (IPA [ɑʊ̯]), as in ㄉㄠˋ (道dào)
この図表に明らかな単母音の“ㄩ(y)“と“ㄝ(e̞)”が含まれている理由は、純粋に音韻論的かつ歴史的である。たとえそうであっても、それらの母音は、次の図にあるものと同等の「上昇二重母音」と見なされるべきです。
上昇二重母音の図表
上昇二重母音は、あまり目立たない半母音で始まり、より目立つ全母音で終わります。
この図は、4つの上昇二重母音を示しています。以下の通りです。
- ㄧㄛ (IPA [i̯o]), as in ㄧㄛˋ (唷yō, 間投詞「よ〜」)
- ㄨㄛ (IPA [u̯o]), as in ㄨㄛˋ (臥wò, 嘘をつく)
- ㄧㄚ (IPA [i̯a]), as in ㄧㄚˋ (亞yà)
- ㄨㄚ (IPA [u̯a]), as in ㄨㄚˋ (襪wà, 靴下)
標準中国語(北京語)の母音記号の変遷
北京語の母音の正確な数は、音韻論や方法論によって異なる場合があります。北京語(普通話)の文字変換の主なシステムは次のとおりです。
Year | System | [ ͡ɨ] | [ ͡ɯ] | [a] | [o] | [ɤ] | [ɛ] | [i] | [u] | [y] | [ɚ] | Count |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1888 | Palladius system | и | ы | а | о | э | е | и | у | юй | эр | 10 |
1892 | Wade–Giles | ih | û | a | o | ê | e | i | u | ü | êrh | 10 |
1918 | Zhuyin fuhao | ㄭ | ㄭ | ㄚ | ㄛ | ㄜ | ㄝ | ㄧ | ㄨ | ㄩ | ㄦ | 9 |
1928 | Gwoyeu Romatzyh | y | y | a | o | e | è | i | u | iu | el | 9 |
1958 | Hanyu Pinyin | -i | -i | a | o | e | ê | i | u | ü | er | 9 |
舌尖・舌歯・そり舌の摩擦音/破擦音の後に表示される「尖端母音」は、多くの場合、中国学者によって [ɿ] と [ʅ] として表されます。これらの 2 つの IPA 記号は、現在、国際音声アルファベットでは廃止され、非標準記号と見なされています。
中国語の単語(音節)構造やその構成要素の基本を学びたい方へ
ピンインや発音の基礎知識、中国語の単語(音節)構造の基本やその構成要素について解説している記事を紹介します。
中国語・華語の単語(音節)構造は「声母(Initials)+韻母(Finals)」で出来ていて、発音する時に声調(Tones)が加わります。この基本構造を正しく理解できるとピンインや声調記号(Tone marks)も自分で書けるようになります。以下の4つの記事を最初に読んで頂くと、中国語の単語(音節)構造が理解できるようになると思いますので、ぜひ目を通してみてください。
1.中国語・華語の単語(音節)構造の基本について
中国語の単語(音節)構造の基本を説明している記事です。単語(音節)構造の基本を理解したい方は、この記事をまず最初に読んでください。
2.声母(Initials)について
中国語の単語(音節)構造の各論「声母(Initials)」についての記事です。
「声母(Initials)」は全部で21個あり、それら全ての発音の基本・方法・コツをまとめた記事です。
3.韻母(Finals)について
中国語の単語(音節)構造の各論「韻母(Finals)」についての記事です。
「韻母(Finals)」は全部で36個あり、それら全ての発音の基本・方法・コツをまとめた記事です。
4.声調(Tones)について
中国語の単語(音節)構造の各論「声調(Tones)」についての記事です。
まとめ
長くなりましたので、中国語の韻母(Finals)についてシンプルにまとめておきます。
韻母(Finals)
- 単語の声母(Initials)を除く残りの「後方の主母音を中心とした部分」
- 中国語の基本的な韻母(Finals)は単母音「a, o, e, i, u, ü」の6つで、「半母音・中間母音(介音) + 主母音 + 最終母音or子音(尾音)」の組み合わせによって、多種の韻母(Finals)へと派生
- 「a, o, e, i, u, ü」は発音時の開口具合(開—>閉)の順番で並んでいて、この順番通りに覚える。
中国語の韻母(Finals)の定義や種類が理解できたら、後はとにかく発音練習あるのみです。練習を重ねれば発音は必ずできるようになりますので、諦めずに頑張ってください。