中国語・華語の【韻母(finals, 語尾)】について(単語構造シリーズ③)

相談者
相談者

中国語の単語構造の大枠は理解したけど、それぞれの要素について知りたいなぁ

韻母(finals, 語尾)について知りたいんだけど

まさ先生
まさ先生

韻母(finals, 語尾)は単語構造の大事な要素だよね

相談者
相談者

理解するの難しいかな?

まさ先生
まさ先生

そんなことないよ。基本をおさえれば問題ないです。

というわけで、今回は中国語・華語の韻母(finals, 語尾)についてお伝えします

  • 韻母(finals, 語尾)がわかる
  • 韻母(finals, 語尾)の発音練習ができる

単語構造の基本が知りたい方へ

この記事は、単語構造の要素「声母(頭文字)・韻母(語尾)・声調(トーン)」いずれかの各論です。単語構造自体の基本が知りたい方や曖昧な方は、先に下記の記事を参照してください。

中国語・華語の【単語構造の基本】について(単語構造シリーズ①)

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用語には英語の直訳を併記

私は台湾の語学センターで中国語学習を開始しました。初学のうちは英語で授業を受けたので、発音の用語も英語で覚えました。帰国後、覚えた用語の日本語での用語名を調べましたが、英語(とその直訳)の方が直感的で理解しやすいと感じています。そのため、理解のしやすさを考慮して、用語には英語と英語の直訳も併記しています。例えば「声母(initals, 頭文字)」の場合、「声母」が日本語の用語名、「initials」が英語名、「頭文字」が英語直訳の用語名です。

もくじ

韻母(finals, 語尾)

それでは、韻母(finals, 語尾)についてお伝えしていきます。

韻母(finals, 語尾)とは

韻母(finals, 語尾)とは、中国語の音韻学で「先頭の音(頭子音)以外の部分」のことです。主母音前にくる半母音・中間母音(介音)、主母音、最終母音or子音(尾音)の組み合わせで成り立っています。簡単い言うと「単語の声母(頭文字)を除く残りの後方の主母音を中心とした部分」のことです。英語では「finals,(語尾)」と言い、「後ろの語(文字)」であることを連想しやすいです。

韻母(finals, 語尾)とは

単語の声母(頭文字)を除く残りの「後方の主母音を中心とした部分」

韻母(finals, 語尾)の種類

先に韻母(finals, 語尾)についての簡単な要約をお伝えし、その後で詳しく説明していきます。

韻母(finals, 語尾)の種類の要約

  • 基本的な韻母(finals, 語尾)は単母音「a, o, e, i, u, ü」の6つ
  • 「a, o, e, i, u, ü」は発音時の開口具合(開—>閉)の順番で並んでいて、この順番通りに覚える。
  • 「半母音・中間母音(介音) + 主母音 + 最終母音or子音(尾音)」の組み合わせによって、多種の韻母(finals, 語尾)へと派生

それでは、ここから韻母(finals, 語尾)の種類について詳しく説明していきます。

基本的な韻母(finals, 語尾)とその派生

基本的な韻母(finals, 語尾)は単母音「a, o, e, i, u, ü」の6つです。さらに、半母音・中間母音(介音)、主母音、最終母音or子音(尾音)の組み合わせによって、多種の語尾(finals, 韻母)へと派生していきます。

介音は「 i, u, ü」を発音する時にそれぞれの前に弱く発音される「y(i), w(u), y(ü)」のことです。

韻母(finals, 語尾)の一覧表

韻母(finals, 語尾)をまとめたものが下図です。

語尾(finals, 韻母)の図表

表の見方は以下の通りです。

  • 横列:語尾(finals, 韻母)発音時の開口具合
  • 縦列:同じ母音を最初に発音する仲間
  • 複母音:母音を複数重ねた音
  • 鼻音:鼻から空気を逃しながら発音する音

単母音発音時の開口具合と声調記号(トーンマーク)の関係

ちなみに、基本的な韻母(finals, 語尾)を「a, o, e, i, u, ü」と順番に並べて書いたことと、その並びの順番で語尾(finals, 韻母)図表の一番上に単母音発音時の「口の形・口の大きさ」の絵を描いたことには理由があります。声調記号(トーンマーク)を表記する時、発音時に開口が一番大きい母音の上に声調記号(トーンマーク)を書くからです。「(開)a, o, e, i, u, ü」の順番で覚えてください。

単母音発音時の開口具合と声調記号(トーンマーク)の優先順位

開(優)← a, o, e, i, u, ü →閉(劣)

基本的な韻母(finals, 語尾)の発音方法

ここでは韻母(finals, 語尾)の中でも基本的な単母音「a, o, e, i, u, ü」の発音方法について説明していきます。

単母音「a」の発音

「a」は一番口を開いて発音する音です。日本語の「あ」よりも口を開いて発音するイメージです。

単母音「o」の発音

中国語の「o」は日本語の「お」の発音方法とは異なります。最初に口をすぼめて「u」を発音し、そのままの流れで口を大きく開いて「o」を発音するイメージです。ちょうど「u」の発音と逆の流れです。

単母音「e」の発音

「e」を発音する時の口の開き具合が「自然な状態」とされています。いわゆるニュートラルな状態です。口にチカラを入れず、やや口を横に開いて「そのまま」発音します。日本語の「あ」と「え」の中間みたいな音です。

単母音「i」の発音

「i」は日本語の「い」ととても似ている発音方法です。

単母音「u」の発音

中国語の「u」は日本語の「う」の発音方法とは異なります。最初に口を大きく開いて「o」を発音し、そのままの流れで口をすぼめて「u」を発音するイメージです。ちょうど「o」の発音と逆の流れです。

単母音「ü」の発音

「ü」は「u」とは完全に異なる発音方法です。「ü」は唇をやや閉じ、さらに唇にチカラを入れて発音します。コツとしては「下唇と顎に力を入れる」感じです。

日本人にとって発音が難しい音は「e, ü」です。なぜならば、日本語にはない音だからです。
「u, o」も日本人が発音を注意しなければならない音です。日本語の「う、お」とは違うのですが、日本人は「う、お」で発音してしまいがちです。

ここまでで、韻母(finals, 語尾)の基本的について全てお伝えしました。

次の章では、さらに母音図表を利用して韻母(finals, 語尾)の発音を詳細に説明します。かなり専門的な内容になるので、気になる方だけ見てみてください。

韻母(finals, 語尾)発音方法の詳細説明

母音図表の利用

言語学者は、それぞれの言語についての発音方法を図表で説明してきました。中国語も同様で、中国語の韻母(finals, 語尾)の発音方法を説明した図表が存在しています。

ここからは、その中国語の母音図表を見ながら、韻母(finals, 語尾)発音について細かく見ていきましょう。

中国語の母音図表について

中国語の母音図または中国語の母音図表は、中国語母音の略図であり、通常は標準中国語を指します。最も古い中国語の母音図は、1920年に中国人の言語学者、易作霖(Yì Zuòlín)によって公開されました。三年後、ダニエル・ジョーンズ(Daniel Jones)が1917年に有名な「基本母音図(cardinal vowel diagram)」を出版しました。易作霖はこれらの図を「單(単)韻/複韻構成図表」と呼んでいます。中国の単母音と二母音を示す図です。

台形の英語の母音図とは異なり、中国語の母音図は三角形です。

単母音の図表

單韻構成圖

この図で使われている発音記号は「注音記号」、「注音符號」または単に 「Bopomofo」として知られています。

この図には、6つの母音または単韻が描かれています。それらは以下です。

  • ㄧ (IPA [i]), as in ㄧˋ (易yì)
  • ㄨ (IPA [u]), as in ㄨˋ (霧wù)
  • ㄦ (IPA [ɚ]), as in ㄦˋ (二èr)
  • ㄛ (IPA [o]), as in ㄆㄛˋ (破pò, 破れる)
  • ㄜ (IPA [ɤ]), as in ㄜˋ (餓è, お腹が空いている)
  • ㄚ (IPA [a]), as in ㄆㄚˋ (怕pà, 恐ろしい)

この図では、母音の高さ(閉、半閉、半開、開)の4段階、母音の背面(前面、中央、方面)の3段階、母音の丸み(広がり、自然、丸)の3段階、を利用していることに注意してください。 ㄦ(er)の配置には疑問があるかもしれませんが、他のすべての母音は、あるべき位置にあると一般的に言われています。

複母音の図表

ここからは複母音について説明してきます。

(※注)図の見方:単母音と同じ三角形の母音図表が二重母音(複合韻または複韻)を表すためにも使用され、各二重母音の開始位置と終了位置を示す矢印が付いています。

下降二重母音の図表

下降複韻構成圖

下降二重母音は、より目立つ (より高いピッチまたは音量) 母音の質で始まり、より目立たない半母音で終わります。

この図には、6つの下降二重母音が示されています。それらは以下です。

  • ㄩ (IPA [y]), as in ㄩˋ (玉yù)
  • ㄝ (IPA [e̞]), as in ㄧㄝˋ (夜yè)
  • ㄟ (IPA [ei̯]), as in ㄌㄟˋ (累lèi, 疲れている)
  • ㄡ (IPA [oʊ̯]), as in ㄉㄡˋ (豆dòu)
  • ㄞ (IPA [ai̯]), as in ㄉㄞˋ (帶dài)
  • ㄠ (IPA [ɑʊ̯]), as in ㄉㄠˋ (道dào)

この図表に明らかな単母音の“ㄩ(y)“と“ㄝ(e̞)”が含まれている理由は、純粋に音韻論的かつ歴史的である。たとえそうであっても、それらの母音は、次の図にあるものと同等の「上昇二重母音」と見なされるべきです。

上昇二重母音の図表

上昇複韻構成圖

上昇二重母音は、あまり目立たない半母音で始まり、より目立つ全母音で終わります。

この図は、4つの上昇二重母音を示しています。以下の通りです。

  • ㄧㄛ (IPA [i̯o]), as in ㄧㄛˋ (唷yō, 間投詞「よ〜」)
  • ㄨㄛ (IPA [u̯o]), as in ㄨㄛˋ (臥wò, 嘘をつく)
  • ㄧㄚ (IPA [i̯a]), as in ㄧㄚˋ (亞yà)
  • ㄨㄚ (IPA [u̯a]), as in ㄨㄚˋ (襪wà, 靴下)

標準中国語(北京語)の母音記号の変遷

北京語の母音の正確な数は、音韻論や方法論によって異なる場合があります。北京語(普通話)の文字変換の主なシステムは次のとおりです。

YearSystem[ ͡ɨ][ ͡ɯ][a][o][ɤ][ɛ][i][u][y][ɚ]Count
1888Palladius systemиыаоэеиуюйэр10
1892Wade–Gilesihûaoêeiuüêrh10
1918Zhuyin fuhao9
1928Gwoyeu Romatzyhyyaoeèiuiuel9
1958Hanyu Pinyin-i-iaoeêiuüer9

舌尖・舌歯・そり舌の摩擦音/破擦音の後に表示される「尖端母音」は、多くの場合、中国学者によって [ɿ] と [ʅ] として表されます。これらの 2 つの IPA 記号は、現在、国際音声アルファベットでは廃止され、非標準記号と見なされています。

中国語の単語構造やその構成要素の基本を学びたい方へ

ピンインや発音の基礎知識、中国語の単語構造の基本やその構成要素について解説している記事を紹介します。

中国語・華語の単語構造は「声母(頭文字)+韻母(語尾)」で出来ていて、発音する時に声調(トーン)が加わります。この基本構造を正しく理解できるとピンインや声調記号(トーンマーク)も自分で書けるようになります。以下の4つの記事を最初に読んで頂くと、中国語の単語構造が理解できるようになると思いますので、ぜひ目を通してみてください。

1.中国語・華語の単語構造の基本について

中国語の単語構造の基本を説明している記事です。単語構造の基本を理解したい方は、この記事をまず最初に読んでください。

中国語・華語の【単語構造の基本】について(単語構造シリーズ①)

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2.声母(initials, 頭文字)について

中国語の単語構造の各論「頭文字(initials, 声母)」についての記事です。

中国語・華語の【声母(initials, 頭文字)】について(単語構造シリーズ②)

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3.韻母(finals, 語尾)について

中国語の単語構造の各論「語尾(finals, 韻母)」についての記事です。

中国語・華語の【韻母(finals, 語尾)】について(単語構造シリーズ③)

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4.声調(tones, トーン)について

中国語の単語構造の各論「トーン(tones, 声調)」についての記事です。

中国語・華語の【声調(tones, トーン)】について(単語構造シリーズ④)

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まとめ

長くなりましたので、声母(initials, 頭文字)についてシンプルにまとめておきます。

韻母(finals, 語尾)

  • 基本的な韻母(finals, 語尾)は単母音「a, o, e, i, u, ü」の6つ
  • 「a, o, e, i, u, ü」は発音時の開口具合(開—>閉)の順番で並んでいて、この順番通りに覚える。
  • 「半母音・中間母音(介音) + 主母音 + 最終母音or子音(尾音)」の組み合わせによって、多種の韻母(finals, 語尾)へと派生

韻母(finals, 語尾)の定義や種類が理解できたら、後はとにかく発音練習あるのみです。練習を重ねれば発音は必ずできるようになりますので、諦めずに頑張ってください。