【中国語文法】アスペクト助詞(時態動詞)と時相助詞

• アスペクト助詞(時態動詞)、時相助詞について理解できる
• アスペクト助詞(時態動詞)、時相助詞を読み書きで使えるようになる

アスペクト助詞(時態助詞)

アスペクト(aspect)とは何か

Comrie(1976)[註1]によると、アスペクト(aspect)は、話者の事態に対する観察方法であり、事態の段階や状況を説明するために使用される概念です。アスペクトは基本的に「完全アスペクト(perfective aspect)と不完全アスペクト(imperfective aspect)」の2種類に分けられます。同じ事態を、私たちはその外部からでも内部からでも観察することができます。もし私たちが事態の外部から観察し、事態の内部の時間構造に関係なく、事態を始まりと終わりのある全体として見る場合、この事態は完全アスペクトな事態です。 逆に、もし私たちが事態の内部から観察し、その始まりと終わりの部分に関係なく、その継続部分だけを観察する場合、その事態は不完全アスペクトな事態です。

つまり、アスペクト(aspect)という概念は、実際には話者の視点の概念であり、反映しているものは話者の事態の観察方法であり、事態の固有な性質ではありません。したがって、同じ事態でも、話者の観察する方法によって、異なるアスペクト(aspect)を示します。

註釈
註1：Comrie, B. 1976. Aspect. Cambridge: Cambridge University Press.

アスペクト助詞(aspectual particles)とは何か

アスペクト助詞は通常、動詞または形容詞の後ろにつながって「完了、持続、経験」のような動作や変化の状態を表し、時間副詞と連ねて用いることができます。 口語文でいつも見るアスペクト助詞には「了、著、過」があり、文語文には「矣」があります。ただし、「矣」という語は通常、語気助詞としても機能します。また、アスペクト助詞の「過」は、経験を表す「過」です。アスペクト助詞は中国語で「動態助詞、情態動詞、時態助詞」などと呼ばれています。

アスペクト本来の意味を鑑みると、アスペクト助詞は「動詞または形容詞の後ろにつながって『話者の視点から見た』動作や変化の状態を表す」と言うことができるでしょう。

アスペクト助詞の種類

前項でも触れましたが、アスペクト助詞には、口語文でよく使われる「著、了、過」と、文語文で使われる「矣」があります。

當代中文課程1〜4課本で扱われているアスペクト助詞の記事一覧

・持続を表す「著zhe」：當代中文課程2課本の第一課(レッスン1)『「著zhe」を伴って「進行中の動作」を表す』

・経験を表す「過guò」：當代中文課程2課本，第三課(レッスン3)『経験を表す助詞(アスペクト助詞)「過」』

・完了を表す「了le」：アスペクト助詞の「了」を単独で使うと、動作が完了したことを表します。アスペクト助詞の「了」の基本的な使い方は、當代中文課程1，第十三課(レッスン13)『動態助詞(アスペクト助詞)「了le」を伴って「完了した動作」を表す』を参照してください。

・完了を表す「了le」：時量詞と「了」を1つだけ使うと、完了した活動の期間を表します。完了した活動の期間を表す「了」は、當代中文課程1，第十四課(レッスン14)『動態助詞(アスペクト助詞)「了le」の後ろの「時間-期間(時量詞)」』を参照してください。

・完了を表す「了le」：時量詞と「了」を2つ使うと、現在完了を表します。現在完了を表す「了」は、第十四課(レッスン14)『二つの「了le」を伴って「完了の期日」を表す』を参照してください。

・c.f.「時間-期間(時量詞)」の使い方は、當代中文課程1課本の第九課(レッスン9)「時間-期間(時量詞)｜時間の期間」を参照してください。

時相助詞

時相(phase)とは何か

陈平(1988)[註２]は、時相については次のように定義しています。「文の時相(phase)構造は、文の純命題的意味に内在する時間特徴が現れます。主に述語動詞の語彙的意味によって決定されますが、文中の他の成分の語彙的意味も選択や制約に関わり、特に目的語や補語の果たす役割は顕著です。」

陈平のいう純命題的意味とは、文に含まれる「了、着、过」などの文法的時態成分や時制表現を除いた、語彙成分によって表される時間的特徴(語そのものに元々備わっている語彙的な時間的特性)を指しています。つまり、時相は、時態や時制と結びつく前に内在する時間特徴であり、最終的な文が表す時間的意味の基礎的構造として位置付けられています。

また、アスペクト(aspect)が話者の視点の概念であるのに対して、時相は(phase)は話者の視点によらない科学的あるいは客観的な、事態の固有な性質を指します。

註２：陈平. “论现代汉语时间系统的三元结构”. 中国语文, 第6期. 中国, 人民教育出版社. 1988, p401-421.

時相助詞(phase particles)とは何か

時相助詞は、伝統的ないわゆる動補構造の補語であり、動詞の後ろ、アスペクト助詞(時態助詞)の前に現れて、動作状態の時間構造を表します。時相助詞には「完、好、過、下去」があります。時相助詞の「過」は、動作の完了を表す「過」です。

時相本来の意味を鑑みると、時相助詞は「動詞の後ろ、助詞(時態助詞)の前に現れて、客観的な、事態に固有な動作状態の時間構造を表す」と言うことができるでしょう。

時相助詞の種類

前項でも触れましたが、時相助詞には「完、好、過、下去」があります。

當代中文課程1〜4課本で扱われている時相助詞の記事一覧

・完wán：當代中文課程2，第八課(レッスン8)『「V + 完wán」を伴って「動作の完了」を表す』

・好hǎo：當代中文課程2，第九課(レッスン9)『動補構造(結果補語)「好hǎo」を伴って「準備万端であること」を表す』

・動作の完了を表す「過guò」：當代中文課程2課本，第十三課(レッスン13)『「V+過guò」を伴って「動作の完了」を表す』

・続けることを表す「下去xiàqù」：當代中文課程2，第八課(レッスン8)『「下去xiàqù」を伴って「何かをし続けること」を表す』