動補構造って難しいんだよなぁ
そんなことないよ。分類を覚えてしまえばすぐに理解できるよ。
え!本当に!教えて〜
いいよ〜
というわけで、今回は動補構造についてお伝えします
- 動補構造について理解できる
動補構造(Verb complement constructions)とは
動補構造の概要
現代中国語で頻繁に使用される動補構造は、述補構造とも呼ばれ、2つの構成要素「動詞(述語)と補語」が前後で組み合わされた構造のことを指します。動詞の後ろに置かれる補語は、動詞の表す動作行為の状況、結果、場所、数量、時間などを補足説明するために用いられます。動補構造をとる補語は、補語の構造と意味によって「結果補語、方向補語、可能補語、様態補語、程度補語、数量補語」などに分類されます。
動補構造を用いた句のことを、中国語では「述補短語、動補短語、中補短語、後補短語、謂補短語」などと呼びます。様々な呼び名があることからもわかるように、動補構造は多くの言語学者が研究対象にしています。
動補構造の研究と起源
現代中国語研究において、動補構造の中で最も基本的なのは結果補語とされ、熱心に研究されています。動詞が結果補語を付帯する形式を中国語で「動結式(動詞結果補語形式)」と呼びますが、最初に「動結式」という用語を提唱したのは吕叔湘でした。吕叔湘(1980年)は「现代汉语八百词(現代中国語800語)」の中で「句形式の動詞には特記が必要な2種類があります。1つは、本動詞に傾向を表す動詞を加えたもので、動赴式(動詞方向補語形式)と呼ぶことができます。もう1つは、本動詞に結果を表す形容詞あるいは動詞を加えたもので、動結式と呼ぶことがでます。」と言及しています。
動結式が出現した時期については、主に「先秦説、漢代説、六朝説、唐代説」の4つの見解がありますが、概ね紀元前221年から紀元後907年ぐらいまでの間に出現したとされています。
動補構造になる補語の分類
前項で、動補構造をとる補語は、補語の構造と意味によって「結果補語、方向補語、可能補語、様態補語、程度補語、数量補語」などに分類されるとお伝えしました。この項では、各分類について説明していきます。
※當代中文課程では動補構造をとる補語のうち、「結果補語と方向補語」の一部が動助詞に分類されています。動助詞については下記の記事を参照してください。
結果補語
結果補語は、動詞の後ろに置かれて、動作行為がもたらす結果を表します。結果補語になることができるのは、動詞と形容詞です。結果補語には「成、倒、到、掉、丟、動、懂、慣、夠、見、開、死、透、完、著、住、飽、錯、大、短、對、多、乾淨、高、光、好、壞、清楚、遠、醉、走、滿、了」などがあります。「到」は結果補語ではなくて方向補語に分類されることもあります。
當代中文課程1〜4課本で扱われている方向補語の記事一覧
・當代中文課程2,第八課(レッスン8)『知覚による結果としての「見jiàn」』
・當代中文課程2,第八課(レッスン8)『認知による結果としての「懂dǒng」』
・當代中文課程2,第八課(レッスン8)『達成の結果としての「會huì」』
・當代中文課程2,第八課(レッスン8)『「V + 完wán」を伴って「動作の完了」を表す』
・當代中文課程2,第九課(レッスン9)『動補構造(結果補語)「好hǎo」を伴って「準備万端であること」を表す』
・當代中文課程2,第九課(レッスン9)『動補構造(結果補語)「到dào」を伴って「⋯⋯に成功すること」を表す』
・當代中文課程2,第十三課(レッスン13)「動助詞「走zǒu」|離れて」
・當代中文課程2,第十四課(レッスン14)「說到shuōdào / 談到tándào⋯⋯|⋯⋯と言えば」
・當代中文課程3,第五課(レッスン5)「V + 滿mǎn⋯⋯|⋯⋯で満ちている」
・當代中文課程3,第五課(レッスン5)『動助詞「掉diào」|⋯⋯から離れる』
・當代中文課程4,第二課(レッスン2)「動補構造(結果補語)「成chéng」|Vが成功する」
・當代中文課程4,第三課(レッスン3)『動助詞「慣guàn」|⋯⋯することに慣れている』
・當代中文課程4,第三課(レッスン3)『動補構造(結果補語)「動dòng」|⋯⋯する動作ができる』
方向補語
方向補語は、動詞の後ろに置かれて、人や物が動作行為によって移動する方向を表します。話し手もしくは話題にしている物事が移動の基準点となり、その基準点へ向かうのか、またはその基準点から離れるのかを示します。方向補語は、空間的な動作による移動の方向を表すだけでなく、心理的な動きによる移動の方向も表します。
方向補語には「來、去、上、下、進、出、過、回、起」があり、これらの補語が動詞の後ろに単独で置かれるものを単純方向補語、「下去」のように「上、下、進、出、過、回、起」のうちの1つと「來または去」が組み合わされて動詞の後ろに置かれるものを複合方向補語といいます。
方向補語は本来、空間移動の方向を表す方向義ですが、派生義を持っているものもあります。
當代中文課程1〜4課本で扱われている方向補語の記事一覧
・當代中文課程2,第七課(レッスン7)『方向に関する構文「V1V2とV1V2V3」』
・當代中文課程2,第十一課(レッスン11)『動助詞「上shàng」|接触していること』
・當代中文課程2,第十二課(レッスン12)「動助詞の「起qǐ」|触れること、及ぶこと」
・當代中文課程3,第五課(レッスン5)『動詞句「出chū」|出てくる』
・當代中文課程4,第六課(レッスン6)『動補構造(方向補語)「下來xiàlái」の様々な意味』
・當代中文課程4,第十課(レッスン10)『「下去xiàqù」の概要』
當代中文課程1〜4課本で扱われている方向補語の派生儀一覧
・當代中文課程2の第一課(レッスン1)「判断に関するV + 起來qǐlái|Vしてみると(したところ)」
・當代中文課程2,第三課(レッスン3)「想起來xiǎng qǐlái|思い出す」
・當代中文課程2,第八課(レッスン8)『「下去xiàqù」を伴って「何かをし続けること」を表す』
・當代中文課程2,第十課(レッスン10)『(方向)補語「出來chūlái」を伴って「把握すること、理解すること」を表す』
・當代中文課程2の第十五課(レッスン15)『「〜し始めること」を意味する「起來qǐlái」』
可能補語
可能補語は、動詞の後ろに置かれて、主観的あるいは客観的な条件から、補語の表す結果が実現可能かどうかを表します。可能補語は、結果補語と方向補語から派生してできる補語で、動詞とそれら補語の間に構造助詞「得」または「不」を置くことで形成されます。
當代中文課程1〜4課本で扱われている可能補語の記事一覧
・當代中文課程2,第八課(レッスン8)『「得de/不bù」を伴って「潜在的な能力」を表す』
・當代中文課程2,第八課(レッスン8)『能力に関する補語「了liǎo」』
・當代中文課程2,第九課(レッス9)『動補構造(可能補語)の「起qǐ」|余裕があること』
・當代中文課程2,第十課(レッスン10)『動補構造の補語「下xià」を伴って「収容するのに十分なスペース」を表す』
・當代中文課程4,第八課(レッスン8)『動補構造(可能補語)「來lái」|気が置けない、気が合う』
様態補語
様態補語は、動詞または形容詞の後ろに置かれて、主語の動作、行為、状態がどのようであるかを具体的に描写します。様態補語になるのはほとんどが形容詞で、動詞または形容詞と様態補語の間に構造助詞「得」を置きます。様態補語は「状態補語」や「程度補語」と呼ばれることもあります。
當代中文課程1〜4課本で扱われている様態補語の記事
・當代中文課程1,第五課(レッスン5)『補語マーカーの「得de」』
c.f. 形容詞の後ろに置かれる様態補語は動補構造ではありませんが、参考までに載せておきます。當代中文課程2,第八課(レッスン8)「Vs + 得de + [補語]|⋯⋯なほど〜だ」
程度補語
程度補語は、形容詞や一部の心理活動を表す動詞の後ろに置かれて、程度が甚だしいことを表します。程度補語には、形容詞の後ろに構造助詞「得」を置くものと、「得」を必要しないものがあります。程度補語は、用法的に様態補語と重なるところがあるため、様態補語の一部または特殊な様態補語として分類されることもあります。
當代中文課程1〜4課本で扱われている程度補語の記事一覧
・當代中文課程2課本,第九課(レッスン9)『副詞相当語句の補語(程度補語)「極了jí le,得不得了de bùdéliǎo,得很de hěn」|ものすごく、きわめて』
・當代中文課程3課本,第三課(レッスン3)『動詞の後ろの強意語「⋯⋯死了sǐle」|⋯⋯過ぎる』
・當代中文課程3,第十課,生詞一,17頁「得要命|ものすごく、死ぬほど」
「要命」は誇張表現で、話し言葉で使われます。當代中文課程では文法として扱われていないため記事はありませんが紹介しておきます。
・當代中文課程4課本,第六課(レッスン6)『様々な機能の「多dūo」』
数量補語
数量補語は、動詞の後ろに置かれて、動作行為の継続時間(期間)や回数を表します。数量補語はさらに、動作や状態の継続時間(期間)を表す時量補語と、動作の回数を表す動量補語に分類されます。時量補語には「一年、兩個月、三天、半個小時、十分鐘、五秒」など、動量補語には「下、趟、遍、次」などがあります。
数量補語は量詞とも呼ばれ、動補構造には分類しないことがあります。當代中文課程でも、数量補語は量詞、時量補語は時量詞、動量補語は動量詞として扱い、動補構造には分類していません。
當代中文課程1〜4課本で扱われている数量補語(量詞)の記事一覧
・時量補語(時量詞)の説明は、當代中文課程1,第九課(レッスン9)「時間-期間(時量詞)|時間の期間」を参照してください。
・時量詞と「了」を1つだけ使うと、完了の意味になります。完了を表す「了」の使い方は、當代中文課程1,第十四課(レッスン14)『動態(アスペクト助詞)「了le」の後ろの「時間-期間(時量詞)」』で説明していますので、そちらを参照してください。
・時量詞と2つの「了」を使うと、現在完了形を表すことができます。現在完了形を表す「了」の使い方は、第十四課(レッスン14)『二つの「了le」を伴って「完了した日」を表す』を参照してください。
・動量補語(動量詞)の説明は、當代中文課程2,第十一課(レッスン11)『動量詞「下xià,趟tàng,遍biàn,次cì」』を参照してください。